■重要事項の説明
宅地建物取引業法第35条では、宅地建物取引業者は、不動産取引において取引の相手方に対し物件に関する法律関係、その他必要な事項について書面を交付して説明することを義務付けられています。
この交付して説明する書面のことを重要事項説明書といい不動産業者は売買契約書に署名する前(契約が成立する前)にこれを説明しなければなりません(もちろん説明するのは宅地建物取引主任者です)・・・説明の相手がどんなに遠くに住んでいたとしてもです。
以下、これから不動産の取引(分譲住宅を購入しよう、マンションを借りよう)を行なおうとしてみえる皆さんへ不動産取引を行なう前の予備知識としてご参考になれば・・・っと。
第一章 :
宅地建物取引業者(不動産業者、住宅販売会社)と取引主任者(宅地建物取引主任者)
【 宅地建物取引業者の欄 】
取引に関わった宅建業者の全部の署名が記載されていますか?
大きな取引などの場合、宅建業者は1社だけでなく数社が関わっている場合が多々あります。その場合、重要事項説明書の宅地建物取引業者欄にはすべての業者を明記していなければなりません。後にトラブルが発生した場合、記載のない宅建業者が責任逃れをしたりして責任の所在が曖昧にされてしまうことがあります。全社の記載
があるかどうかチェックしましょう。
【 宅地建物取引主任者の欄 】
説明者は宅地建物取引主任者ですか?
重要事項説明書は宅地建物取引主任者の資格を持った代表者または社員等が取引主任者証を提示して説明しなければなりません・・・主任者証の提示を求められなくても提示して説明しなければなりません。
社員の中に取引主任者がいるようになっていても実際には取引主任者でない者が説明をしている場合があります。悪質な時は「名義貸し」ということがありますので、重要事項説明書の説明を受けるときには主任者証の提示を求めましょう。
【 不動産の表示の欄 】
1.現況「更地」?…は「宅地」の意味ではありません。状況を説明してもらいましょう。
また、登記簿上の地目が「山林」、「雑種地」、「畑」や「採草放牧地」などであっても現況「更地」などと書かれている場合がありますが、この場合も建物等で使用されていない土地というだけで「宅地」の意味ではありません。
建築不可能の土地もあるので必ず説明を受けてください。
2.土地の面積で小数点以下の記載が無い?
市街地の感覚では小数点以下の面積であっても切り捨てられると大変ですが、土地の面積は「山林」や「雑種地」などは登記簿上では小数点以下は記載されません。
3.賃貸借契約書が無くても借地人がいる?
資材置き場にしているなど無償で貸し借りしている場合は、賃貸借契約書は ほとんどの場合ありません。例えば海苔を干す時期などだけ一時的に無償で貸し借りをしている場合などもあります。このような場合は当然に登記もされていませんから注意が必要です。
【 取引態様の欄 】
「代理」は手数料不要です?・・・ 仲介のなかには「代理」と「媒介」があります。「代理」の場合は売主の代理で販売しており一般に売主から買手側の手数料分を含んだ報酬を受け取る契約となっているため買主は手数料が不要となるケースがほとんどですが、これが必要になるケース?もあるので注意が必要です。「媒介」の場合は規定の手数料が必要となります。
第二章 登記簿の記載内容
【 所有権にかかる権利に関する事項に記載があるとき 】
売買の予約、代物弁済等の仮登記、差し押さえ、競売などの記載があるときは、抹消登記がきちんとできているか確認して下さい。抹消されていない物件の取引は危険です。重要事項説明書にもこれらの経緯等が記載されていることを確認してください。
【 所有権以外の権利に関する事項に記載があるとき 】
抵当権や賃借権などの登記についても抹消登記ができているかどうか確認します。 ただ、不動産を購入するときに抵当権をつけることは一般によくあることですから、契約時に抹消登記が無くても、決済時までに処理ができることを契約書に明記するなどして、決済時に司法書士立ち会いで抵当権抹消に必要な書類等が整っているかどうかの確認をすれば問題ありません。
【 建物の登記が無い場合 】
新築分譲住宅などは売買時に保存登記をするのが一般的で未登記のことがあります。このような場合は決済と同時に保存登記をすれば間違いが起こりません。
中古住宅でも未登記のものがありますが、できるだけ売主側で登記済みにしておいてもらうのが安心ですが、それができない場合は、売り渡し証書などの書類を司法書士に依頼して登記してもらうとともに、行政にも固定資産台帳の名義変更をしてもらうため所定の書類を提出する必要があります。
【 登記簿に記載された名義人が売主と異なる 】
売主の氏名が登記と異なる?…
次の様なことが考えられますが、納得のできる説明を受け重要事項説明書にも記載されているかどうか確認しましょう。
1.相続の場合
取引成立前に相続の手続きを売主側で完了させておくよう契約書に記載しておき、決済時に登記簿謄本で確認できれば問題ありません。
2.中間省略登記の場合
登記費用の節約や、場合によっては脱税行為のため中間省略登記を相手側から要望されることがあります。
脱税行為は論外。このような場合は元の所有者と売主間の売買契約書を確認する、元の売主の中間省略登記をすることについての承諾書を添付してもらうなど、登記簿上の所有者と売主の間にトラブルなどがないかどうか確認すべきです。
3.婚姻等による姓の変更
登記簿に記載された内容が変更になった経緯が解る公的な書類が必要です。
【 登記名義人が複数のとき 】
売買契約のとき、登記名義人が複数のとき(例えば売主がご夫婦の共有名義など)、契約の場には全員(ご夫婦共々)出席するのが一般的ですが、そうでない場合もあります。その場合は、契約書に「契約書に押印すること」「代金の受領」などを記載した委任状が添付されていれば後々のトラブルを回避できます。
【 住所が印鑑証明書の住所と異なるとき 】
住所を移転した、また住居表示変更などにより登記簿記載の住所と印鑑証明書の住所が異なるときは、旧住所表示の解る住民票などで確認します。2回以上転居している場合は戸籍の附票が必要になります。売主が本人であるかどうかの確かな証明の一つです。重要事項説明書で確認しましょう。
戸籍の附票って?住民票は、住所地の役所で管理しているのに対して、戸籍の附票は本籍地の役所で管理しています。戸籍の附票は住所の証明ですが、住所地の役所で交付されるものではなく本籍地の役所で交付されるものです。
第三章 法令の制限と解約
【 法令に基づく制限 】
建ペイ率や容積率の算定には次のような要素があります。中には建築確認対象面積が減って予定していた建物が建たない場合があります。重要事項説明書が原因のトラブルの中で多く発生しています。
1.道路境界線後退による敷地面積不算入の部分がある。
2.道路幅員による容積率の減少。
現在、家が建っているから将来も同じように建てられる….とは限りません。法律が改訂されたりして現存する建物等が新しい法律に適合しなくなった場合、既存不適格建築として将来の建て替え時に現在と同規模の建物が建築できない場合などがあります。重要事項説明書には必ず記載されていなければなりません。
【 私道があるとき 】
物件に私道が含まれているときや前面道路が私道のときはどういう種類の道路か十分説明を受けて下さい。重要事項説明書の中でも特に注意して確認する必要があります。私道負担として管理費、通行料、施設整備費などが必要となる場合があります。
売主名義の私道部分が別にある場合はそれも含めて売買するのかどうかも、きちんと重要事項説明書と売買契約書に記載し所有権移転も必ずしておきましょう。
【 契約解除と違約金について 】
契約が解除されたときの違約金等については、売主と買主間の合意に基づいて決めます。重要事項説明書では必ず説明がなければなりませんが、売買契約書ではさらに詳細に記載しておくようにしましょう。
銀行の融資が受けられなかった場合など停止条件をつけておくことが必要です。
契約が解除となった場合の仲介業者との手数料の返還については重要事項説明書では記載されません。
媒介契約書で業者の報酬の受領時期と解約時の支払い済み金員の返還について明確にしておきましょう。
【 業者売主のときは手付け金等の保全措置を 】
業者が売主のときの手付け金や中間金等が代金の10%か1,000万円を超える場合は法律で保全措置を要求できます。
【未完成物件のとき 】
未完成物件のときはパンフレットや図面で完成時の形状や構造を確認します。
特に外構についてはパンフレット等で描かれているものとは違う場合が多いので打ち合わせ内容を文書に記録し、重要事項説明書の添付資料として残すのが良いでしょう。
その他、まだまだ多くの説明事項がありますが、一生のうちに自宅(土地、建物)を購入するのはたいがい1回、多くても2、3回?・・・というほど、自宅の購入は大きな買い物です。それだけに、失敗のないように慎重に物件を選びたいものです。
もう一度・・・不動産は高額な取引となりますから不明な点については必ず不動産業者の説明を受けて契約をしましょう。
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